こんにちは。寄り道キャリアデザインの運営者「K」です。
普段、車を運転していて突然遭遇する「警察官による手信号」。
信号機の故障や停電、あるいは大規模なイベントや事故処理の現場などで見かけるこの光景ですが、正直なところ「あれ?教習所で習った動きとなんか違う…」と戸惑った経験はありませんか。
教科書で見た警察官は、直立不動で両手をピンと水平に伸ばしていたはず。
でも、目の前の警察官は片手で誘導棒を振っていたり、口に笛をくわえながら手招きしていたり…。
そんな「片手の手信号」を見て、「これって本当に正式な信号なの?」「自分の解釈で進んでしまって違反になったらどうしよう」と不安に駆られるドライバーの方は非常に多いのです。
また、夜間に赤い誘導棒が振られているのを見て、「赤だから止まれ?」と反射的にブレーキを踏んでしまいそうになることもあるでしょう。
この記事では、そんな現場ならではの疑問や不安を解消するために、警察官の手信号のリアルな実態と、絶対に間違えないための判断基準を徹底的に解説していきます。
K元警察官の私が徹底的に解説いたします。
- 警察官の手信号が「片手」になってしまう現場の裏事情と法的効力
- 複雑な手の動きを無視して「身体の向き」だけで正解を導く方法
- 赤く光る誘導棒でも「進め」を意味する夜間特有のパラドックス
- 信号機が青でも警察官が「止まれ」と言ったら?法的優先順位の解説


警察官の手信号は片手でも有効なのか
運転中に最も迷うのが、警察官の動作が「教科書通りではない」ときです。
特に、片手での誘導や、少し崩れたフォームでの合図に対して、私たちはどのように反応すべきなのでしょうか。まずはその法的根拠と、なぜそのようなスタイルになるのかという背景から紐解いていきましょう。
片手で行う手信号の意味と法的効力
結論から言うと、片手であっても警察官の手信号(指示)には法的強制力があります。
その根拠となるのは 道路交通法第6条 です。
【道路交通法6条】
警察官等が交通整理のために行う手信号または指示に従わなければならない。
つまり、形式に関係なく「警察官の意思が明確に示された動作」なら従う義務があり、従わないと信号無視と同じ扱いになります。
一方で、「手信号の標準形」自体は 道路交通法施行令第5条 で定義されています。
- 両腕を水平(赤/青の切替)
- 片腕を垂直(黄信号)
片手でも、警察官の明確な指示であれば法的効力は変わりません。
なぜ現場では「片手」が多用されるのか
では、なぜ警察官は教習所で習うような「基本形(両手)」ではなく、片手で信号を送ることが多いのでしょうか。これには、現場ならではの切実かつ合理的な理由が存在します。
① 装備品を扱うため
- 笛
- 無線機(受令機)
- 誘導棒
上記を同時に扱う必要があります。
片手がふさがる場面が多く、現場では片手信号はむしろ標準的です。
② 長時間の交通整理は体力負担が大きい
両腕を水平に広げ続ける姿勢は非常に負担が大きく、長時間維持するのは困難です。
そのため、意味が明確に伝わる範囲で合理的に片手を使うのが実務上の運用になっています。
警察官という仕事のリアル
雨の日も風の日も、そして炎天下でも立ち続けなければならない交通整理の現場。こうした過酷な環境下での業務も、警察官の給料や手当の仕組みに反映されていると言えるかもしれません。
警察官の給料はなぜ高い?仕組みや手当の裏側とブラックな実態
警察官の手信号が片手の時の判断基準


「片手でも有効」ということはわかりましたが、実際に現場で瞬時に判断するのは難しいものです。そこで、どんな状況でも迷わないための「鉄則」をご紹介します。
身体の向きで判別する簡単な覚え方
現場でパニックにならないための一番確実な方法は、「手を見るのではなく、警察官の身体の向きを見る」ことです。
手の動きは、誘導棒を持っていたり、振っていたりとバリエーションがありますが、身体の向きによる信号の意味は不変です。以下の法則を頭に叩き込んでおきましょう。
| 警察官の身体の向き | 自分から見た意味 | イメージ |
|---|---|---|
| お腹(正面) または 背中が見えている | 赤信号 (停止線の手前で停止) | 身体が「壁」となって道を塞いでいる状態。 |
| 横顔(側面) が見えている | 青信号 (進んでよし) | 身体の向きが進行方向と平行。「通り抜け可能」な状態。 |
非常にシンプルですよね。「お腹と背中は壁(通れない)」「横顔が見えたら通路(通れる)」というイメージを持てば、腕が何本上がっていようが関係ありません。
※注意:これは「施行令5条の手信号」を行っている場合のルールであり、
掌を出す・手招きをするなど 個別の指示(道路交通法6条)」が出ている場合はそちらが最優先です。
腕を垂直に上げた黄信号の通過判断
では、信号が切り替わる瞬間はどうでしょうか。警察官が腕を(片手であっても)垂直に上げた場合、これは信号機でいう「黄色信号」を意味します。
この動作は、青信号の状態から赤信号へと移行する合図です。もし、あなたが交差点の停止線に近づいている時にこの合図を見たら、原則として停止位置で止まらなければなりません。
ただし、急ブレーキをかけなければ止まれないような距離まで接近してしまっている場合や、すでに交差点内に進入してしまっている場合は、そのまま進んで交差点を速やかに抜けなければなりません。これも通常の電気信号機の黄色ルールと全く同じです。
警察官がいきなり腕を上げると、「おっ、挨拶かな?」と勘違いしてしまうケースも稀にあります。
しかし、交差点内での垂直の腕上げは明確な信号の変化ですので、愛想笑いをして通り過ぎたりせず、周囲の状況を確認して停止の準備に入ってください。
信号機よりも手信号が優先される理由
ここで改めて確認しておきたいのが、信号機と手信号の優先順位です。道路交通法第6条により、「信号機の表示と異なる手信号が行われている場合、ドライバーは手信号に従わなければならない」と定められています。
例えば、目の前の信号機が青であっても、交差点の中央にいる警察官があなたに対して「お腹(正面)」を向けて両手を広げていたら、それは「赤信号」です。絶対に止まらなければなりません。
逆に、信号機が赤であっても、警察官が側面を向いて手招きをしていたら、それは「青信号」として進むことができます。
これは、事故処理や災害、信号機の故障など、機械のシステムでは対応しきれない緊急事態において、現場の人間の判断を最優先させるための絶対的なルールです。
夜間・視界不良時の「灯火」による手信号


夜間の運転中やトンネル内、悪天候時などでは、手信号が見えにくいため、「灯火(合図灯・誘導棒)」が使用されます。この「光る棒」を使った誘導には、昼間とは少し違う特徴と、初心者が陥りやすい罠があります。
「赤い誘導棒」でも進んでいいパラドックス
工事現場や警備の現場でよく見る、赤く発光する誘導棒。私たちの頭の中には「赤=止まれ・危険」という刷り込みがあるため、赤い棒が見えると反射的にブレーキを踏みたくなります。
しかし、警察官の手信号においては、「誘導棒の色」自体には信号の意味(赤・青・黄)はありません。 重要なのは「その光がどう動いているか」なのです。
もし、警察官が赤い誘導棒を持って、身体の横で大きく左右に振っていたり、進行方向を指し示して振っている場合、それは「青信号(進め)」を意味します。「赤い光が動いているから止まらなきゃ」と勘違いして急停止すると、後続車に追突される危険性があります。
- 誘導棒を横に振っている:「こっちへ流れてください」という合図(青信号)
- 誘導棒を頭上に上げている・固定している:停止の合図(赤・黄信号)
夜間は「色」に惑わされず、「光の動き」と「身体の向き」の2点をセットで確認するよう心がけましょう。
シーン別:現場での実践的な読み解き方
ここでは、より具体的なシーンを想定して、どう判断すべきかをシミュレーションしてみましょう。
A:大規模停電で信号機が消えている交差点


災害などで信号機がブラックアウトしている交差点。中央に警察官が立っています。
彼は笛を「ピーッ、ピーッ」と吹きながら、片手の誘導棒を東西(横方向)に振っています。あなたは南から北へ向かって運転しています。
警察官は東西を向いて誘導棒を振っています。つまり、南から来たあなたには「お腹(正面)」か「背中」が見えている状態です。
お腹か背中が見えている=「壁(赤信号)」です。
誘導棒が振られていても、それは東西の車に対する合図です。あなたは停止線の手前で停止し、次の合図を待ちます。
B:右折待ちをしている時の変化
あなたは交差点内で右折待ちをしています。対向車が途切れるのを待っていると、交差点に立っていた警察官が、突然腕を垂直に上げました。
腕を垂直に上げる=「黄色信号」への変化です。
あなたはすでに交差点内に進入して右折待ちをしている状態です。
黄色信号になったので、対向車線(直進車)も停止しようとします。あなたは交差点内に留まり続けると交通の妨げになるため、安全を確認した上で、速やかに右折を完了させて交差点から出なければなりません。
C:掌(てのひら)を向けられた時
事故現場付近などで、警察官がこちらを向いて、片手のひらを「待て」のポーズで突き出してきました。腕は水平ではなく、肘が曲がっている状態です。
これは正規の手信号(水平・垂直)の形状とは異なりますが、道路交通法第6条に基づく「警察官の指示」として有効です。万国共通で掌を向ける動作は「停止」を意味しますので、直ちに停止してください。
形式にとらわれすぎず、相手の「止めてくれ」という意思を汲み取ることが重要です。
警察官と警備員の手信号の違い


道路上には警察官以外にも、工事現場や駐車場の警備員(交通誘導員)さんが立っていることがあります。彼らの手信号と警察官の手信号、一体何が違うのでしょうか。
法的強制力の決定的差異
最大の違いは「法的強制力があるかどうか」です。
権限の違い
- 警察官・交通巡視員:
道路交通法に基づく「信号機」と同等の権限を持ちます。指示に従わない場合は「信号無視」として検挙されます。 - 警備員:
あくまで警備業法に基づく「任意の協力要請」です。法的強制力はなく、彼らの指示に従わなかったとしても、直ちに道路交通法違反になるわけではありません。
こう書くと「じゃあ警備員さんの言うことは無視してもいいの?」と思われるかもしれませんが、それは大きな間違いです。
警備員さんは、工事現場の穴や重機の動き、死角などを把握した上で、事故を防ぐために誘導してくれています。
手信号を無視した場合の違反と罰則
最後に、警察官の手信号を「よくわからなかったから」といって無視した場合のリスクについて触れておきます。
警察官の手信号無視は、信号機の赤信号を無視したのと全く同じ扱いになります。
- 違反名: 信号無視(赤色等)
- 違反点数: 2点
- 反則金: 9,000円(普通車の場合 ※執筆時点)
「片手だったから見落としました」という弁解は通用しません。
警察官が交通整理を行っている時点で、そこには何らかの異常事態や規制が必要な理由があるのです。それを無視して突っ込むことは、反則金以上に、重大な事故を引き起こすリスクがあることを肝に銘じておきましょう。
まとめ:今日から使える判断のコツ
現場で警察官の手信号に遭遇したら、以下の3ステップで落ち着いて判断してください。
- まずは減速する: 警察官がいる=通常とは違う状況です。
- 身体の向きを見る: 「お腹・背中」なら止まれ。「横顔」なら進め。
- アイコンタクトをとる: 迷ったら警察官の目を見る。彼らもドライバーを見ています。
いかがでしたでしょうか。片手の手信号であっても、その意味と効力は変わりません。
むしろ、現場の最前線で安全を守るために、合理的に行われているプロの動作だったのですね。
私たちドライバーがその意図を正しく理解し、協力し合うことで、災害時や緊急時でもスムーズで安全な交通社会が維持できるのです。
※本記事は一般的な交通ルールや道路交通法に基づいた解説ですが、実際の道路状況や警察官の個別の指示が最優先されます。運転の際は周囲の安全を十分に確認し、ご自身の責任において判断してください。
参考資料
埼玉県警ホームページ
https://www.police.pref.saitama.lg.jp/documents/1209/teshingou_2.pdf









